SBP設立の目的の一つに「組織バンク事業」があります。
近年、乳癌腫瘍サンプルのプロファイリングによる遺伝子マーカーは強力なスクリーニングの手法として目覚ましい発展をとげつつあります。しかしながら、切除された組織の質は結果に大きな影響を与えるためQuality Control (QC)が重要です。遺伝子情報などを用いた基礎研究やテーラーメード治療を実現するための臨床研究を相補的におこなうためのTranslational research(TR)の発展には、確立され明文化された組織バンクは不可欠であると考えます。近年では遺伝子マーカー(予後や抗がん剤の効果判定マーカー)の臨床応用には前向きな臨床試験を行うことがgold standardとされていますが、このような試験には時間的経済的コストがかかるので、もっと効率的な"prospective-retrospective"デザインも提唱されています。
とりわけその新しいデザインには
1)前向き試験から得られた十分な数の患者から得られた十分な組織があり、
2)アーカイブされた組織を用いて分析的な確認作業が可能であり、
3)評価方法が研究を始める前に完全に書面にて明らかになっており、
4)一つの完全に独立したサブタイプ(もしくはバイオマーカー)の評価に集約されており、
5)アーカイブされた組織から得られた結果は一つ以上の独立した研究からの組織を使った確認作業がなされていることが重要です。
これらの実現には組織バンクの設立が必須であり、NPO法人瀬戸内乳腺事業包括的支援機構が主体となり「瀬戸内乳腺組織バンク:Setouchi Breast Tissue Bank(STB)」を設立する予定です。ヒト組織またはヒト組織に由来する試料の提供機関からの入手や保管等の処置および研究機関への譲渡が適正に行われ、研究開発に利用されることを目的としています。