- 回答:手術後の定期的なマンモグラフィは、反対側の乳がんの早期発見に役立ちます。しかし、血液検査(腫瘍マーカーを含む)やいろいろな画像検査を症状がないときに定期的に行うことは、あまり役立ちません。担当医の診察のもと、必要に応じて受けることをお勧めします。
- 解説:症状がないときに、血液検査や各種の画像検査(骨シンチグラフィ、胸部CT検査など)を定期的に行うことはあまり役立ちませんが、日本の多くの施設で定期的検査は主治医の判断で行われています。主治医とよく相談することをお勧めします。ただし、反対側に新たにできた別の乳がんや手術部近くにがんが再発した場合は、早期に発見することが適切な治療に結びつきます。
- コメント:定期的な医師の診察、年1回のマンモグラフィ、体調に何らかの変化があった場合の担当医への速やかな相談をお勧めします。
- 回答:乳がんの腫瘍マーカーは、再発した乳がんに対してその治療が効いたかどうかを知りたい場合に、よい指標となることがあります。しかし、乳がん手術後の再発の有無をチェックすることや、乳がん検診としての乳がんの早期発見には役立ちません。
- 解説:乳がんの腫瘍マーカーは、再発したり全身に広がった乳がんに対し治療が効いたかどうかを判断するためには、よい指標となります。また、腫瘍マーカーは早期の乳がんでは上昇することは少なく、乳がんの検診や再発の早期診断には役立ちません。
- コメント:腫瘍マーカーは結果が数値で表れるため、患者さんにとって比較的わかりやすいものですが、数値に一喜一憂しないようにしましょう。
- 回答:セカンドオピニオンを聞くことによって、診断,治療、検査などさまざまな状況で、患者さん自身が自分の診療を正しく理解し、十分に納得することができるため、安心して診療を受けることができるでしょう。
- 解説:セカンドオピニオンを直訳すると「第二の意見」です。担当医の意見が第一の意見であるのに対し、他の医師の意見をセカンドオピ二オンと呼びます。
乳がん診療を専門とする医療機関の多くはグループ診療を行っていますが、他の医師の意見も聞いてみたいとき、納得できないというようなときは、遠慮なくセ力ンドオピニオンを聞きに行きたいと担当医に申し出てください。
手順としては、現在の担当医に紹介状などの資料の準備を依頼し、セカンドオピニオンを提供してくれる医療機関のセカンドオピニオン外来を受診します。その後、元の担当医の外来を受診し、セカンドオピニオンを聞いた上でのあなたの気持ちを伝え、治療方針について相談するとよいでしょう。
- コメント: 医療機関によっては、保険診療で実施しているところもあります。しかし、セカンドオピニオン提供は30分~1時間程度かかりますので保険外診療として独自の料金を設定しているところが多いです。事前に確認しておくのがよいでしょう。
- 回答:「標準治療」とは、多くの臨床試験の結果をもとに検討がなされ、専門家の間で最も効果があると合意の得られている最善の治療法のことをいいます。乳がんの治療法は、乳がんの進行の度合い、乳がんの性質(どのような薬が効きやすいか)、患者さんの状態などに応じて異なります。そのため一人ひとりの患者さんで最適な治療法も異なります。
最善の治療を受けるためには、まず自分の病気について正しく理解すること、そしてその状態に対する標準治療が何であるかを理解しておくことが重要です。
- 解説:抗がん剤の主な副作用としては、吐き気・嘔吐や脱毛、白血球減少などがあります。これは、抗がん剤が増殖の盛んな細胞を攻撃するため、正常細胞の中でも増殖の盛んな細胞、例えば消化管や髪の毛の細胞、白血球を作っている骨髄が攻撃された結果起きたものです。その他にも、アレルギー、倦怠感(だるさ)、浮腫(むくみ)、口内炎、下痢、爪の異常、関節痛・筋肉痛、心臓への影響、神経への影響などがありますが、それぞれに対して有効な予防法や対処法があります。また、副作用の出方や程度には個人差がありますし、使用する薬剤によっても違ってきますので、医師・看護師・薬剤師とよく相談してください。
- コメント:乳がんの治療には、手術などの外科治療、ホルモン剤や抗がん剤などの薬物治療、放射線治療などがあります。実際に個々の患者さんで治療方針を決める際は、それらの中から適切な治療を組み合わせて決めます。
最新情報をもとに専門家が集まって議論し、その時点で最善であるとコンセンサス(合意)の得られた治療法が標準治療となります。そしてそれらの合意事項をまとめたものがガイドライン(治療指針)です。
標準治療というと「並みの治療」でしかないのではないかと誤解される人もいますが、 標準治療は「現時点で、患者さんに最も利益が高い、最善の治療」ということです。
- 回答:臨床試験は、新しい薬や治療法の有効性や安全性を、実際に患者さんに協力していただいて確かめるもので、将来の患者さんのために不可欠です。患者さんが受けるリスクや利益は、それぞれの試験の内容によって大きく異なりますので、説明を十分受けて納得された場合は参加してください。参加するかどうかは患者さんの自由であり、断っても不利益はありません。
- 解説:臨床試験の目的は、新しく開発された薬や新しく考案した治療法が実際に「人間の病気にどれくらい効くか、副作用はどの程度なのか
を調べることです。
治療法は患者さんの協力と長い年月によって少しずつ進歩しますので、過去の患者さんからもらった恩恵を将来の患者さんに渡すために、臨床試験は不可欠です。
臨床試験へ参加を依頼された場合は、治験か市販後の臨床試験か、どのような段階の試験か、目的や方法、利益やリスクなどについて詳しく話を聞いて、「参加してみようかな
と思われたときには参加してください。
- コメント:トラスツズマブ(ハーセプチン)の他、ラパチニブ(タイケルブ)やベバシツズマブ(アバスチン)などの薬剤も開発され、使えるようになってきています。