- 回答:これからの治療方法を選択するのに必要な情報が得られます。
- 解説:乳がんの病理検査では、浸潤の有無、腫瘍の大きさ、がんの種類(組織型)、がん細胞の悪性度(グレード)、リンパ節転移の有無と個数、脈管浸襲、ホルモン感受性の有無、HER2タンパクの過剰発現あるいはHER2遺伝子増幅の有無を検査しています。
浸潤がんと非浸潤がん:非浸潤がんは適切な治療を行えば、転移や再発をすることはほとんどありませんが、浸潤がんは転移や再発の危険性があります。
がん細胞の悪性度:細胞の「顔つき」のことで、1から3の3段階に分けられ、悪性度が高いと転移・再発の危険性が高くなります。
脈管侵襲:脈管とは血管やリンパ管のことで、がん周囲の脈管にがん細胞がみられるかどうかを脈管侵襲と言います。乳がんが転移する場合、がん細胞は必ず脈管を通るため、脈管侵襲が確認されると、転移・再発する危険性が高くなります。
ホルモン感受性:女性ホルモンはがん細胞の核に存在するホルモン受容体(エストロゲン受容体)にくっついて、がん細胞が増殖するように刺激します。ホルモン受容体を持っている乳がんを「ホルモン感受性がある」といい、ホルモン感受性があればホルモン療法が有効です。
HER2:乳がん患者の約25%では、正常に比べ多量のHER2タンパクが存在しており、このような乳がんを「HER2タンパクの過剰発現がある乳がん」と呼びます。通常はまず免疫組織化学染色法を行い、必要に応じてFISH法を追加しています。そして免疫組織化学染色法で3+の場合とFISH法で陽性の場合は、「HER2陽性」と判定します。HER2陽性乳がんはそうでないものに比べて、転移・再発の危険性が高いと考えられています。このHER2タンパクに対する薬がトラスツズマブ(ハーセプチン)やラパチニブ(タイケルブ)であり、HER2陽性乳がん患者に使用されます。
- コメント:病理検査は、その後の治療法を選択するうえで必須の検査です。