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乳がんガイドライン 初期治療 > 概要

Q 14:初期治療の考え方と全体の流れについて教えてください。

  • 回答: 初期治療は、病状や患者さんの希望に合わせて最適な局所治療と全身治療を組み合わせ、乳がんの再発を抑え、治癒させることを目的とします。
  • 解説:乳がんと診断され、最初に受ける治療を「初期治療」と呼びます。治療方針を決めるためにはまず、正確な診断、病期(がんの進行度合い)、合併症、年齢などからみた全身状態の把握が必要です。これらの情報をもとに、局所治療である外科手術(乳房温存手術、乳房切除術、腋窩リンパ節郭清、センチネルリンパ節生検)や放射線治療と全身治療である化学療法、ホルモン療法、抗HER2療法を適切に組み合わせて治療(集学的治療)を行います。
  • コメント:乳がんの進行状況、全身状態をもとに手術、放射線、薬物治療を適切に組み合わせて行います。

Q 15:治療前に行われる検査について教えてください。

  • 回答:乳房のCT検査およびMRI検査は、乳房内の病巣の広がり診断やリンパ節転移診断に用い、乳房温存手術の決定に役立つ場合があります。乳がん診断時に骨シンチグラフィーやPET検査などにより他臓器への転移(遠隔転移)を調べることは、必ずしも必要ではありません。また、乳がんの確定診断に用いた生検標本をさらに詳しく検査することで、その患者さんの予後やさまざまな薬剤の効き具合を予測することができます。
  • 解説:画像検査としてマンモグラフィー、超音波検査、CTやMRIの検査が行われます。これらの目的は、乳房内のひろがりや腋窩リンパ節の転移の可能性を調べる為です。これらの結果をもとに温存手術の適応やセンチネルリンパ節生検の適応を決めます。また、遠隔転移の可能性を調べるために上記検査に加えて骨シンチやPET検査などが行われますが、早期乳がんで、症状のない場合、遠隔転移の可能性は低いとされるため必ずしも必要とはされていません。乳がんの確定診断のために生検が行われますが、さらに詳しくがんの悪性度、ホルモン受容体、HER2の発現状況を調べる病理検査をすることで予後や薬の効果を予測することができます。
  • コメント: 病期の進行度合いを調べ、適切な治療を行うためには、画像検査や生検標本の病理検査が必要です。

Q 16:術前化学療法/術前ホルモン療法について教えてください。

  • 回答:術前化学療法は標準治療の一つです。しこりが大きいために乳房温存手術ができない人に対して術前化学療法を行い、しこりが小さくなることで乳房温存手術が可能になる場合があります。術前ホルモン療法はまだ研究が十分でなく、標準治療とはいえませんが、閉経後乳がんに対して行われ、しこりが小さくなることで乳房温存手術が可能になる場合があります。
  • 解説:しこりが大きい場合に、手術の前に化学療法を行うことでしこりを小さくしてから手術をする方法が術前化学療法です。小さくなったことで温存手術ができることもあります。これは標準治療の一つとされており、主にアンスラサイクリン系薬剤とタキサン系薬剤が用いられます。HER2陽性の場合にはハーセプチンを併用することが有効とされます。転移再発を防ぐ効果に関しては、術前化学療法と術後化学療法の効果は同等です。デメリットとしては温存乳房内再発がわずかに高くなる可能性があります。手術可能でホルモン感受性がある乳がんに対して、術前にホルモン療法が行われることがありますが、現在その意義を検討する臨床研究が進められているところです。
  • コメント: しこりを小さくして温存可能にする術前化学療法は標準治療とされています。術前ホルモン治療は臨床研究が現在進められているところです。

Q 17:妊娠中に乳がんと診断されました。治療や妊娠・出産はどのようになりますか。

  • 回答:妊娠の継続や出産・授乳ががんの進行や再発に影響を与えることはありません。しかし、検査や治療は胎児に影響を及ぼすことがあり、特に妊娠前期の治療やCT検査、MRI検査は流産や胎児に異常や奇形を起こす危険が高いとされています。したがって、検査や治療は、胎児と母体のそれぞれの危険性と利益を考えながら慎重に行う必要があります。
  • 解説:妊娠前期は赤ちゃんのからだの器官ができる大事な時期ですので、この時期の治療や検査は流産や胎児に異常や奇形を起こす危険があります。
    超音波検査や細胞診・針生検は胎児への影響がなく、マンモグラフィも腹部を保護しながらの撮影が可能ですが、CTは放射線、MRIは磁場の影響で造影剤も胎児に異常や奇形を起こす危険があります。
    妊娠の時期によって乳がん治療の胎児への影響は異なります。抗がん剤や手術の際の麻酔薬は妊娠前期では影響がありますが、中期から後期では悪影響の可能性が低くなるので、使用する場合があります。ホルモン療法・分子標的治療・放射線療法などはどの時期においても悪影響を及ぼす可能性があるので出産後に行います。
  • コメント:妊娠の時期によって、可能な検査や治療が異なります。

Q 18:炎症性乳がんと診断されました。治療はどのように行いますか。

  • 回答:炎症性乳がんに対しては、まず抗がん剤による全身療法を行います。抗がん剤治療によって効果があった場合には、乳房切除および放射線治療を行い、さらにホルモン受容体が陽性の場合には標準的なホルモン療法を行うといった、集学的な治療が勧められます。
  • 解説:炎症性乳がんを、手術や放射線療法といった局所治療だけで治癒させることは困難です。局所再発や、術後早期に遠隔臓器に再発する危険性が高いからです。 針生検や、切開生検で組織を採取して病理診断を行い、抗がん剤による全身療法を行います。HER2タンパクが陽性の場合はトラスツズマブ(ハーセプチン)を併用します。抗がん剤の効果が得られ、可能と判断されれば乳房切除術を行いますが。局所再発率が高いため温存手術は勧められません。術後には再発予防の目的で放射線治療を行います。ホルモン受容体陽性の場合は手術後にホルモン療法を行います。 術前の抗がん剤治療によって効果がみられなかった時には、手術を行わず放射線治療を行います。
  • コメント:局所再発、遠隔転移ともに起こしやすいタイプの乳がんで、全身療法が必須です。

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