- 回答: 閉経後の女性では、肥満は乳がん発病リスクを確実に高めます。一方、閉経前の女性では逆にリスクが低くなることがほぼ確実です。しかし、肥満は生活習慣病の大きな原因の一つですから、日常生活で太りすぎないように気をつけることはとても大切です。
- 解説:閉経後の肥満が乳がん発病リスクを高めるのは血液中の女性ホルモンの増加が原因ではないかと考えられています。
- コメント: 閉経後女性では、脂肪細胞が女性ホルモンを産生しているためです。
- 回答:アルコール飲料の摂取により、乳がん発病リスクが高くなることはほぼ確実です。飲酒は控えめにしましょう。
- 解説:アルコ-ル飲料の摂取がどのようなメカニズムで乳がんの発病に影響を与えるのかはまだよくわかっていません。飲む量が増えるほど乳がん発病リスクが高まるのは確実です。
- コメント: 2011年日本乳がん診療ガイドライン引用:飲む量が増えるほどリスクは高まりますが、一日どの程度の量からリスクが増えるか(閾値)については明確ではありません。
- 回答:大豆食品を多く取ることで乳がん発病リスクが低くなるかどうかは結論が出ていません。イソフラボンをサプリメントの形で摂取した場合も、乳がん発病リスクが低くなるという証拠はなく、お勧めできません。
- 解説:
1.大豆イソフラボンの作用
イソフラボンは乳がんの治療薬であるタモキシフェン(ノルパデックス)と同じような構造をしていることから、乳がんを予防する効果も期待されています。
2.大豆食品を多く取ることで乳がん発病リスクは低くなりますか。
日本人を対象にした研究では毎日みそ汁を「3杯以上」取る人は「1杯以下」しか取らない人に比べ4割くらい乳がん発病リスクが低くなることがわかりました。ただし、塩分の過剰摂取につながる危険性があるので注意が必要です。
- コメント: 大豆にはイソフラボンが多く含まれています。
- 回答:乳がん発病リスクを低下させるために健康食品やサプリメントを摂取することはお勧めできません。
- 解説:
1.薬(医薬品)とサプリメント、健康食品の違いは何ですか。
サプリメント、健康食品は、医薬品のような厳しい、基準で効果や安全性が確かめられたものではありません。
2.サプリメントや健康食品を摂取することで乳がん発病リスクは低くなりますか。
WCRF/AICR報告書では、「がんの予防目的でサプリメントを摂取することは勧められない」と記載されています。そのうえでがん予防全般に対する栄養の摂取については「食物を通して十分な栄養を取ること」が目標とされています。現在の日本の食生活では病気のために食事摂取が不可能な場合を除いて、食品以外から補わなければならない栄養素はほとんどありません。
- コメント: サプリメントや健康食品にも副作用が出ることがあります。慎重に摂取しましょう。
- 回答:喫煙は肺がんや多くの生活習慣病の一因となっており、乳がん発病リスクも高める可能性があります。健康維持の観点からも,禁煙を強くお勧めします。
- 解説:他人が吸った煙草の煙(副流煙)の害もよく話題になりますが、これについても乳がんと弱い関連があるという報告があります。したがって、他人の煙草の煙にさらされることは避けた方がよく、現在喫煙されている方は周りの方の受動喫煙に対する配慮が必要です。禁煙するとその時点から発病のリスクが下がることが知られています。
- コメント: 医療機関によっては、禁煙外来があります。
- 回答:時間の不規則な勤務、特に夜間に勤務する機会の多い女性は、乳がん発病リスクが高くなる可能性があります。ただし、これを日本人女性に当てはめると、1年間に1,000人に1人が乳がんにかかるというリスクが1.5人に増える程度なので、それほど気にすることはありません。できる範囲で規則正しい生活を送ることを心がけましょう。
- 解説:乳がんの発病率は、生活習慣の西洋化に伴い上昇を続けています。不規則な勤務の女性が、急いで仕事を変えたりする必要はありません。
- コメント: 夜間勤務が乳がん発症リスクを増加させるかどうかを目的とした研究は少なく、今後の検討が必要です。
- 回答:閉経前の女性では運動が乳がん発病リスクを低下させるかどうかは結論が出ていません。しかし、閉経後の女性では定期的に運動を行ったほうが、乳がん発病リスクが低くなることがほぼ確実です。日ごろから軽い運動をする習慣をづけましょう。
- 解説:定期的な軽い運動(少し汗ばむぐらいの歩行や軽いジョギングなどの有酸素運動を毎日10-20分程度)を心がけるといいでしょう。
- コメント: 運動は、年齢や健康状態によって体の負担になることがあります。自分にあった継続できる運動から始めましょう。
- 回答:ストレスが乳がん発病リスクを高めるかどうかは結論が出ていません。また個人の性格と乳がん発病リスクとの間には明らかな関連性はありません。
- 解説:心理社会的な要因と乳がん発病リスクとの関連については, まだまだあいまいな点が多く、明らかなことはいえないというのが現状です。
- コメント: ストレスなどにより健康を損なうことはあります。一人で悩まず心療内科などに相談することも一つの方法です。
- 回答:ホルモン補充療法の中でも、工ストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲスチン(プロゲステロンなどの黄体ホルモン)を併用する方法では、乳がん発病リスクが、わずかですが高くなることは確実です。エストロゲンだけを補充する方法では、はっきりとした結論は出ていません。一方、経口避妊薬の使用においても、乳がん発病リスクがわずかながら高くなる可能性があります。
ホルモン補充療法も経口避妊薬も乳がん発病リスクを高めますが、その度合いはわずかなので、使用することによる利益とのバランスを考え合わせて決める必要があります。
- 解説:エストロゲンとプロゲスチンの併用療法については、更年期症状が日常生活に悪影響を及ぼすような場合以外は勧められません。婦人科医とよく相談されることをお勧めします。
- コメント: ホルモン補充療法と乳がんのホルモン療法とは名前が似ていますが別物です。
- 回答:乳がんには、遺伝が関係して起こるものとそうでないものがあります。欧米では乳がん患者さんの10〜20人に1人でその発病に遺伝が関係しているといわれていますが、日本ではそれと同じか、やや少ない程度と考えられています。
- 解説:
≪乳がんと遺伝子の関係≫
乳がんの発病に強く関連する遺伝子としてBRCA1とBRCA2がみつかっています。BRCA1に異常を持つのは、欧米では1000人に1.2人(0.12%)とされています。
≪家族性乳がんと遺伝性乳がん≫
家系の中に乳がんの人が複数いる場合を「家族性乳がん」と呼びます。その中で遺伝子異常を認めるものを「遺伝性乳がん」とよびます。
- コメント: 家族性乳がんの診断基準
1:親、子、兄弟姉妹の中に乳がんが最初にわかった人(発端者)を含めて3人以上の乳がん患者さんがいる。
2:親、子、兄弟姉妹の中に発端者を含めて2人以上の乳がん患者さんがおり、その2人のうちどちらかに以下の①〜③に該当する。
1) 40歳未満で発症
2) 両側に乳がんを発症
3) 乳がん以外にがんにかかっている。
- 回答:家系内に乳がん患者さんがいる場合、乳がん発病リスクは高くなります。具体的には、親、子、兄弟姉妹に乳がんの患者さんがいる場合には、いない場合と比べて2倍以上リスクが高くなります。
- 解説:乳がんを発病した親戚の人数が多い場合はさらにリスクは高くなります。
米国の研究では、BRCA1やBRCA2に変異がある場合は、70歳までに8割ほどの確率で乳がんを発病します。遺伝子の変異は1/2の確率で子に遺伝します。
BRCA1やBRCA2は卵巣がんにも関係しているので、卵巣がんにかかった人が家系内にいる場合は乳がん発病リスクが高くなります。
- コメント:その他のがんについては、乳がん発病リスクが高くなるという報告は今のところありません。
- 回答:予防のために乳房や卵巣を切除することや、タモキシフェン(抗エストロゲン薬)を服用することで、乳がん発病リスクが低くなることがわかっています。しかし、日本では遺伝子診断や予防的な治療を行う適切な条件が整っていません。したがって、遺伝性乳がん家系が疑われる女性は、成人になるころから、乳腺専門医による定期健診をしっかりと受けましょう。
- 解説:
≪遺伝子診断について≫
遺伝子検査は、健康保険の適応になっておらず、検査ができる施設も限られていますので、検査を希望する場合には担当医に相談してください。
≪遺伝性乳がんの予防≫
予防的治療は、日本では健康保険の適応にはなっていません。しかし、早期に発見すれば治癒できる可能性も高く、遺伝性乳がんの家系が疑われる女性は、定期健診をしっかり受け、早期発見に努めることが大切です。
- コメント:尚、「遺伝カウンセリング」を受けられる医療機関は徐々に増えてきており、病気の詳しい評価、遺伝子検査、心配や不安なことなどの相談に応じています。